読む人の手帖 -yom days

読書の記録

葉室麟『蜩ノ記』感想

葉室麟『蜩ノ記』、祥伝社 この本を読んだきっかけは、テレビCMで映画の予告編を見たことです。 それを見た時、びっくりしたんです。 何だこれは、と。 切腹を控えて幽閉されている男に会いに行ってその覚悟を聞くとか云云かんぬんのストーリーが、藤沢周平の『蝉しぐれ』そのものだと思ったからです。 CMを見ている間、どういうわけだろう、蝉しぐれの映画のリメイク版が作られたんだろうかとちょっと本気で困惑しました。 最後にどんとタイトルが出てきて『蜩ノ記』と。 どうやら『蝉しぐれ』じゃないらしい、 でもタイトルまで被っている、何じゃこりゃ。 ネットで検索してみると、どうやら直木賞を穫った作品らしいということが分かって、益々読んで確かめなければという気になりました。 で、図書館で順番待ちも出ていなかったので、さっそく借りて読みました。 最初に本を手に取って思ったこと、装丁画がかっこいい! 夕暮れに染まった障子を背景に、侍が背筋を伸ばした凛とした佇まいで文机に向かっている、その絵がとても素敵だったので期待が膨らみました。 でも、読んでみると… 率直に言って、もの凄く退屈でした。 以下ネタバレを含む感想。...

貴志祐介『青の炎』

皆さま、如何お過ごしでしょうか。 前回の更新からきっかり一ヶ月経っていました。 いやはや、意欲をなくして三日坊主になった訳ではないのですが、 所謂「梅雨バテ」に罹ってて、体調が思わしくなかったので 読む本も溜まる一方で全然崩せていませんでした。 梅雨もそろそろ終わりという雰囲気ですので、またぼちぼちやっていきたいと思います。 さて、復帰第一作目 貴志祐介『青の炎』/角川書店 。 内容(「BOOK」データベースより)  櫛森秀一は、湘南の高校に通う十七歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹との三人暮らし。その平和な家庭の一家団欒を踏...

貴志祐介『悪の教典』上・下巻

読書感想  貴志祐介『悪の教典』上・下巻/文春文庫 高校教師の蓮見聖司は、爽やかなルックスと人心掌握に長けた弁舌で生徒・職員から絶大な人気を誇る。 そんな彼がなぜ一夜にして教え子たちを皆殺しにしたのか? サイコホラー。 以下、含ネタバレ。...

山本周五郎『あんちゃん』

読書感想 山本周五郎『あんちゃん』新潮文庫  読了しました。 アマゾンの履歴によると購入したのは2012年なので、 手をつけるまでにえらい時間が掛かってしまいました。 山本周五郎の本は、これまでに『日本婦道記』、『五辧の椿』などを読んでいます。 これらに比べると、今回の『あんちゃん』はバラエティに富んだ短編集だったと思います。 父子もの、色恋もの、市井、悪党など八編。 中から印象に残ったものを抜き出して書いてみます。含ネタバレ...

買った本/積読メモ

買った本 6月15日 『青い城』モンゴメリ 『霜の朝』藤沢周平 ---------------------------------------  図書館で借りてる 本 『青い炎』貴志祐介 『江戸は廻灯籠』佐江衆一...

文学散歩:燃えよ剣 函館編

文学散歩第3回、司馬遼太郎『燃えよ剣』函館編。 というか五稜郭編です…。笑 今年の3月上旬、念願の函館五稜郭へ行ってきました。 橋を渡ってお堀の内側へ。 函館奉行所。 堀の内側、五稜郭の中心にあります。 函館戦争終結後の明治4年に解体されました。 現在の姿は2010年に復元したもの。中は資料館になっていて見学が可能。 大砲を運んだ坂。 土塁の上に大砲を運ぶ為のもので、函館戦争の際に造られたと想定されています。 この上から七重浜方面に向けて港の新政府軍艦隊を射撃したものの、 射程距離は届かなかったそう…。 ...

文学散歩:八甲田山

文学散歩第2回、 新田次郎『八甲田山死の彷徨』です。 この作品は個人的に、映画の印象の方が強いですが…。 今年3月上旬、青森に行ってきました。 目的は八甲田山に行くこと、雪中行軍遭難資料館に行くこと。 八甲田山までは青森駅からJRのバスで1時間程かかりました。 本数が少なく、往復の時間も考えると思っていたより時間を割く必要がありました。 後述の資料館もそうですが、青森は交通の便が良くないので、 公共交通機関で移動しようと思うと時間を取られます。 その為、一日でたくさんの場所を見て回るのは困難でした。 本当は太宰治の生家なども行きたかったんですが、 これはかなり距離が離れていると案内所で知り断念。  道中にはまだまだ雪の壁が…。 ...